1976年の『アップサイド・ダウン』と、80年のロイ・エアーズとの共演盤のカップリング・アルバムである。前者はフェラの恋人の一人だったサンドラがボーカルを取るタイトル・ソングが名作の一つとして知られている。後者はバイブラフォン奏者のロイが主導し、フェラとしては珍しいディスコ・ビートが飛び出しびっくりさせられる。
フェラ・クティはロンドンの留学時代、最初の結婚をしている。その時の子どもが、現在、欧米でも活躍しているフェミ・クティである。フェラはその後、バンドを率いてアメリカに渡るが、ロスで出会ったのが彼女だった。
サンドラのおかげでフェラは60年代当時の黒人解放運動や、これと密接な関係にあった先鋭的なジャズマンら黒人ミュージシャンとの交流を持つ。サンドラは恋人であり人生の師といった大きな存在であった。
そんなサンドラをナイジェリアへ迎えて録音されたのが「アップサイド・ダウン」である。アフリカでは、なにもかにもが天地逆転、混乱の極みだ!と訴えるサンドラのボーカルは火を吹くようだ。決して流麗なスタイルではないが、凄味がある。フェラ&アフリカ70も(当時は絶好調の時代ではあるが)、さらにエネルギッシュなプレイを聴かせる。
ロイ・エアーズとの共演2曲は、なによりフェラと彼のグループがメインとなった「アフリカ・センター・オブ・ザ・ワールド」がいい。
リズム・アレンジ、音のバランスなどに、おそらくエアーズの意見が反映されているのだろう、微妙にいつもと異なるアフロ・ビートに仕上がっている。バックでギターなどと一緒に延々と同じリズム・パターンを繰り返すバイブラフォンも効果的だ。
(藤田正)
*CD解説の訂正:本CDにおけるマビヌオリ・カヨデ・イドウ氏の解説「UPSIDE DOWN」の後半9行分(6ページ)は、藤田正の解説分が間違ってコピー&ペーストされたものです。ここに訂正します。
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