フェラ連続レビュー(4):『ザ・トゥー・サイズ・オブ・フェラ』
UICY3456~7
 2枚組のフェラ・クティ。彼がナイジェリアを代表するミュージシャンとして爆発的な人気を獲得し出した72年から、晩年の録音までを収めたコンピレイションだ。
 72年の作品は「ロフォロフォ・ファイト」。<国家内国家>としてカラクタ・リパブリックを創ったことで、ナイジェリア政府に徹底して弾圧された70年代中葉の問題作「カラクタ・ショー」(76年)や「ソロウ・ティアーズ・アンド・ブラッド」(77年)、そして晩年の「パンサ・パンサ」(92年)と、同じアフロ・ビートと言っても時代によってずいぶん肌触りなりテイストなりが違うことがわかる。
『ザ・トゥー・サイズ…』は、ダンス用に選曲されたということだ。だがアフリカン・ポップは本来ダンス抜きに語ることはできないはずなので、つまるところ「西欧向け/クラブ向け」の選曲ということなのだろう。テンポの速い曲が集められている。
「カラクタ・ショー」や「J.J.D.」「ソロウ・ティアーズ」といった70年代の代表曲の素晴らしさはいうまでもないが、それ以外でも、例えば90年代の「パンサ・パンサ」にしても目を見張るものがある。急テンポで進むこの曲は、フェラを中心とした各メンバーのソロが聞き物だ。我々はリード・ボーカリストがいると、どうしてもその肉声を「主」と考えてしまうが、アフロ・ビートはそうではない。もともと彼は60年代のモダン・ジャズを学んだ人であり、その思想をナイジェリアン・ルーツとブレンドした。「パンサ・パンサ」は、そういった<アフロ・ジャズ>の名演の一つ、と言っていいだろう。
 そして「パンサ・パンサ」が、その前に置かれた「カラクタ・ショー」などかつての名作を歌いこんでもいることを知ると、フェラと彼の仲間たちの長い道のりを想い、深い感動を覚えるのである。
(藤田正)
amazon.co.jp-『ザ・トゥー・サイズ・オブ・フェラ』
 
 

( 2005/01/25 )

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