アルバム『ロンドン・シーン』と『シャカラ』を収めた7曲入りである。
一世を風靡した
エリック・クラプトンとのバンド、クリームのドラマーとして活躍したジンジャー・ベイカーが、フェラの才能に気づきバックアップし出した時期の作品が『ロンドン・シーン』である(70年の録音)。
『シャカラ』は、英米で苦労したあと、レゴス(ナイジェリアの首都)で人気を呼び始めた時期の録音(71年)だ。ジャケットに写る上半身裸の女性たちとフェラが、(まだ)にこやかに微笑んでいるのが当時らしい。
アナログ盤で『シャカラ』を買ったのは70年代の後半だったと思う。まだアフリカン・ポップがどんなものであるかまるで分かっていなくて、フェラのように「15分、20分で1曲」が当り前という構成には、最初ずいぶん戸惑った記憶がある。一つのテーマを、アフリカン・ポリリズムの中でじっくりと煮詰めてゆくというスタイルは、フェラにとってのジャズなんだ…といった理解も、まだできなかった。
フェラは『シャカラ』の「レディ」などで時代の寵児となる。「レディ」は、女と男は平等、アフリカン・ウーマンに尊厳を、という内容である。アメリカで黒人解放運動を体験してきた彼らしい歌である、と同時に、その後の(国家権力による弾圧後の)、剥き出しの言葉のヤイバはない。若々しい、彼独自の「アフロ・ビート」が完成した当初の姿が『シャカラ』の魅力と言える。
一方、後半に収録された『ロンドン・シーン』は、
フェラ・クティならではの「型」を作り上げるその直前の様子(試行錯誤)が見える。ライナーノーツにも書いたが、ジェイムズ・ブラウンはもちろん、ニューオーリンズ・
ファンク、スライ・ストーン、60年代の先鋭的なジャズなどの最先端のアメリカン・ブラック・ミュージックと、アフリカン・ルーツがいよいよブレンドし出した(!)というスリルが、なんともかっこいい。
ファンクが大好きな人にはこの『ロンドン・シーン』は必聴だろう。エロチックな内容の、まるで最高のニューオーリンズ・
ファンクを聴いているような「エグベ・ミ・オ」には、ジンジャー・ベイカーも(名前を隠して)参加している。
(藤田正)
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