フェラ連続レビュー(2):『シャカラ/ロンドン・シーン』 
UICY3448
 アルバム『ロンドン・シーン』と『シャカラ』を収めた7曲入りである。
 一世を風靡したエリック・クラプトンとのバンド、クリームのドラマーとして活躍したジンジャー・ベイカーが、フェラの才能に気づきバックアップし出した時期の作品が『ロンドン・シーン』である(70年の録音)。
『シャカラ』は、英米で苦労したあと、レゴス(ナイジェリアの首都)で人気を呼び始めた時期の録音(71年)だ。ジャケットに写る上半身裸の女性たちとフェラが、(まだ)にこやかに微笑んでいるのが当時らしい。           
 アナログ盤で『シャカラ』を買ったのは70年代の後半だったと思う。まだアフリカン・ポップがどんなものであるかまるで分かっていなくて、フェラのように「15分、20分で1曲」が当り前という構成には、最初ずいぶん戸惑った記憶がある。一つのテーマを、アフリカン・ポリリズムの中でじっくりと煮詰めてゆくというスタイルは、フェラにとってのジャズなんだ…といった理解も、まだできなかった。
 フェラは『シャカラ』の「レディ」などで時代の寵児となる。「レディ」は、女と男は平等、アフリカン・ウーマンに尊厳を、という内容である。アメリカで黒人解放運動を体験してきた彼らしい歌である、と同時に、その後の(国家権力による弾圧後の)、剥き出しの言葉のヤイバはない。若々しい、彼独自の「アフロ・ビート」が完成した当初の姿が『シャカラ』の魅力と言える。
 一方、後半に収録された『ロンドン・シーン』は、フェラ・クティならではの「型」を作り上げるその直前の様子(試行錯誤)が見える。ライナーノーツにも書いたが、ジェイムズ・ブラウンはもちろん、ニューオーリンズ・ファンク、スライ・ストーン、60年代の先鋭的なジャズなどの最先端のアメリカン・ブラック・ミュージックと、アフリカン・ルーツがいよいよブレンドし出した(!)というスリルが、なんともかっこいい。ファンクが大好きな人にはこの『ロンドン・シーン』は必聴だろう。エロチックな内容の、まるで最高のニューオーリンズ・ファンクを聴いているような「エグベ・ミ・オ」には、ジンジャー・ベイカーも(名前を隠して)参加している。
(藤田正)

amazon.co.jp-フェラ・クティ『シャカラ/ロンドン・シーン』
amazon.co.jp-クリーム『フレッシュ・クリーム』
 
 

( 2005/01/19 )

Otis Redding & His Orchestra"Live On The Sunset Strip"
20年の軌跡を綴る新録2枚組ベスト『HISTORIA / DIAMANTES』
Singin' from Yaeyama:彩風の新作『彩花』
あんたら/ほんまに/頑張ってください 『LAUGH IT OUT』RIZE with 隼人
テイチクからリリースされた沖縄音楽の好企画
琉神マブヤーから、ついにおにぎりパパになったアルベルト
DVD『嘉手苅林昌追善公演 白雲ぬ如に…』
サンボマスター『きみのためにつよくなりたい』:400メートル爆走気味に表現する「若さ」
カントリー・ボーイの今を歌う:池田卓『風月花日鳥曜日』
ついに出ましたよ、上原知子の島唄集『多幸山』
岡林信康の復刻スタート:『わたしを断罪せよ』
古謝美佐子8年ぶりの新作『廻る命』
マンボラマTokyo推薦:名作登場!フアン・ルイス・グエラの新作『Llave de Mi Corazon』
反ブッシュでグラミー受賞のカントリー3人組:『テイキング・ザ・ロング・ウェイ/ディキシー・チックス』
「マンボラマToyko」推薦CD:R.バレット、ブーガルー期の代表作『アシッド』
明るいエイズ・ソング「ディマクコンダ」by山田耕平
「マンボラマToyko」推薦CD:ジョニー・パチェーコ『ア・マン・アンド・ヒズ・ミュージック エル・マエストロ』
「マンボラマToyko」推薦CD:ジョー・バターンのアルバムが続々
マンボラマTokyo推薦CD:エディ・パルミエリ/アット・ザ・ユニヴァーシティ・オブ・プエルト・リコ
10年ぶりの名録音:大城美佐子/唄ウムイ
フェラ連続レビュー
フェラ連続レビュー(5):アップサイド・ダウン/ミュージック・オブ・メニー・カラーズ
フェラ連続レビュー(4):『ザ・トゥー・サイズ・オブ・フェラ』
フェラ連続レビュー(3):アフロ・ソウル vs アフロ・ビート
フェラ連続レビュー(2):『シャカラ/ロンドン・シーン』 
フェラ連続レビュー(1):フェラ・クティのアルバム全26枚
フェラ・クティ
フェラ連続レビュー(1):フェラ・クティのアルバム全26枚
フェラ・クティの幻の映像がDVDに『フェラ・イン・コンサート』
フェラ連続レビュー(3):アフロ・ソウル vs アフロ・ビート
フェラ連続レビュー(5):アップサイド・ダウン/ミュージック・オブ・メニー・カラーズ
アフロ・ビートのフェミ・クティが新作を準備中/マネー・マークと一緒に
フェラ・クティのアフロ・ビートが再評価の動き
フェラ連続レビュー(2):『シャカラ/ロンドン・シーン』 
フェラ連続レビュー(4):『ザ・トゥー・サイズ・オブ・フェラ』
7月8日 しょうちゃんの蛇に三線/藤田正
表紙へ戻る