Coccoのラスト・アルバム『サングローズ』
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 「私が消えれば楽になるんでしょう?」
 ラスト・シングルとなった「焼け野が原」には、このような言葉が出てくる。
 男と女の揉め事をテーマにした歌、と言ってしまえば簡単だが、Coccoという歌手はなかなか単純にものごとを考えさせてくれない。
 Coccoのステージを観ればわかるように、彼女は、言葉を発しうたいながらもその言葉では言いきれないもどかしさを体全体で表現している。ある人にとっては不気味な、ある人にとっては不思議な力を抱えるシンガーがCoccoである。
 そんな彼女が、2001年の2月に活動休止を宣言し、事実上のラスト・アルバム『サングローズ』を発売する(4月18日)。自分自身、その歌すべてが沖縄であると断言する彼女のオープニング「珊瑚と花と」は、やはり「ずっと南の小さな島は、何故か凍えて私を創り…」という島へのメッセージから始まる。愛していながら、通じあえない。愛するモノの傍にいながら味わう疎外感。十全な愛を感じた時の向こうに見える、死。
 Coccoは、沖縄を遠くに見つめながら、愛と断絶を常にテーマとしてきたシンガーだった。
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 シングル「焼け野が原」(写真)も、そんな歌である。
 異様に流れの早い歌謡界にあって、Coccoは、巨額の富を求めるメディア社会に馴染めなかったのかも知れない。アルバムにも収録された「焼け野が原」には、そのようなメッセージが込められているのではないかとすら思わせる。
 これも愛と疎外と断絶であろう。
 アルバム収録曲「珊瑚と花と」「わがままな手」「Why do I love you」「羽根〜lay down my eyes」「美しき日々」「歌姫」「風化風葬」「Still」「Dream’s a dream」「星に願いを」「卯月の頃」「焼け野が原」「コーラルリーフ」。タイトル名は沖縄では「サンゴ細工のバラ」を意味する。
 作詞作曲、「こっこ」(「星に願いを」の作曲は柴草玲)。全編曲を根岸孝旨が手がける。ラスト・アルバムであることを意識して作ったのかはわからないが、幅広い曲調の中に、心の空虚を埋めようとうたう彼女の歌手としての存在性が、よく出たアルバムに仕上がっている。
 やはりこういう歌だと、彼女のような個性は、ポップ・スターとして疲れ果ててしまうのだろうか。

( 2001/04/10 )

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