MISIAの3rd『Marvelous』
BVCS21022
 「MISIAは、日の出る国の南部に生まれた。彼女の声はうたうために作られ、その声は山を越えて広がり、宇宙へと飛び至る。……」
 英語の男性教師が教科書を読み開いているような、ずいぶんとマジメな口調で、アルバムが始まる。海外向けなのだろうか。それとも丁寧な英語の読み方からして、日本の一般人向けなのだろうか。よくわからない「イントロ」である。
 このイントロを飛ばしてトラック2から聞く。そうすると高位安定型のヴォーカリスト。MISIAの良さがじっくりと味わえる。
 『Marvelous』(BMG FUNHOUSE)はMISIAの3枚目となるアルバムである。発売は2001年4月25日である。大ヒットとなった「Everything」や、ドリカムと共演した「I miss you〜時を越えて」をふくむ全13トラックが収録されている(ラスト・トラックはジュニア・バスケス・リミックスによる「Everything」)。
 (写真は、初回限定のアルバムのジャケット)。
 ブラック・ミュージックに傾倒するMISIAだけに、今回のアルバムも、ファンクあり、アース・ウィンド&ファイア的なサウンドあり、もちろんヒップホップありと、彼女は自分のスタンスを崩していない。トラック2の「Rhythm Reflection」では、ダフト・パンクでお馴染みになったボコーダー的なボーカル処理も使って、彼女のお得意である70年代後半〜80年代ファンクにちょっとした色合いの変化を付けている。
 ファンクを軸として、彼女がドリカムを先輩として親しく感じていることも、 共演シングル「I miss you」も入った『Marvelous』だけによく納得できる。たとえば、トラック5の「あの夏のままで」もそうである。
 MISIAの歌作り(歌詞)は、都市社会に暮らす無名の日本女性たちの視線を芯に持つ。これを彼女は平易な言葉で描く。「夏の光を浴びて輝いた海も、今は静かに波音を飾ってる広いスクリーン」と始まる「あの夏のままで」もその例だが、こういう言葉を歌として活かせることができるのは、彼女が体内に培っているブラック・リズムのアイデアなのである。
(写真はアルバムから)。
 特に彼女は、ブラックとは見えないように租借し、一般化するのがとても上手である。『Marvelous』に聞ける「時をとめて」などは、前からあったオーソドックスなバラードの型だと思いがちだが、これはMISIAを筆頭とした最近のソウル系シンガーが日本の音楽土壌に植え込んだものなのである。
 そういう意味でMISIAのアルバム『Marvelous』は、現在の日本のポップスを代表する雛型アルバムとして捉えることができるはずである。
 『Marvelous』はプロデューサーとしてのMISIAのセンスも光る作品となっている。
 (写真はアルバムから)。
 
 

( 2001/04/26 )

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