特にそれがわかるのがアップ・テンポの曲で、例えばメンフィスの歌姫、
カーラ・トーマスとの熱愛デュエット「ラヴィ・ダヴィ」などは、後ろのホーンも含め、怒涛の攻めとしか言いようがない。
オーティスの重量級ボーカルをさらに後押しする、
アル・ジャクソン(ドラム)のハード・キック&パンチ。二人の周りをカミソリのようなギター・カッティングやホーンが切り込みをかけてくる。
こんな素晴らしい曲ですらファンの間だではさほど話題にならないのだから、オーティス&ヒズ・リズムとは、どれほどのクオリティを誇っていたかが知れるのである。
そしてもう一つ注目すべきなのが、カントリー&ウェスタンの味わいである。
これは「ドッグ・オブ・ザ・ベイ」ほか、共作者としても優れた作品を書いたスティーブ・クロッパーの音楽性に顕著なのだが、ちょっとしたメロディ・ラインやリフなどに、南部のもう一方の文化、白人の伝統が活かされているのである。
実はスタックスも、アラバマのフェイム・スタジオも、熾烈な黒人差別が横行した南部において、信じられないような人種間の融和があったスポットとして知られてきた。
クロッパーもダック・ダンも白人である。そんな二人が黒人街へやってきて、何の差別もなしに、一人のミュージシャンとして意見をぶつけた。
このような「人間」としてのインタープレイの成果が、オーティス・レディングのソウルだったのである。