「
琉球フェスティバル'07」(東京)の内容が決定した。
今年は
大城美佐子(沖縄本島)、
大工哲弘(八重山)、朝崎郁恵(奄美)……と、じっくり「島のうた」を聴かせてくれる大物たちに焦点が当てられている。
若者代表としては、「アンマー」(おかあさん)のヒットで注目される「かりゆし58」や、池田卓、
よなは徹たちが出演。
Beats21では、恒例となった「琉フェス」チケットのインターネット予約を受け付ける。
■ 日時:2007年7月29日 (日) 15:15開場・16:00開演
■ 会場:東京・日比谷野外音楽堂(雨天決行)
■ エイサー:東京沖縄県人会青年部
■ 司会:キャン×キャン
■ 主催:テレビ朝日
■ 後援(予定):琉球新報社 / 沖縄タイムス社 / エフエム沖縄 /
78タイフーンfm
■ 協賛:日本トランスオーシャン航空 / オリオンビール /
瑞泉酒造 / リトル沖縄オーバーシーズ / オリンピア 他
■ 協力:東京沖縄県人会 / わしたショップ各店 / 泡盛銀座店 他
■ チケット:前売¥6,800 当日¥7,300(指定席・税込)
■お問合せ:M&Iカンパニー 03-5453-8899
「島のうた」に焦点が当たる。
2007年の「
琉球フェスティバル」(東京)のテーマは、これだろう。
琉フェスだから、毎年うたが中心となるのは当然……確かにそうなのだが、今年はさらに「うた」のように思う。
大城美佐子、
大工哲弘、朝崎郁恵と記された出演者の名前を眺めれば、じっくりと耳を傾けてほしい、そんなメッセージが読み取れるのだ。沖縄や奄美ならではの島の情愛を、歌い手それぞれの個性に触れながら味わう。07年、暑さ盛りの7月の日比谷野音で、綾なす「島のうた」の数々に出会えるように思う。
この2月、大ベテランの
大城美佐子は生まれ故郷である辺野古のステージに立った。米軍キャンプと隣接する浜辺でのコンサートだ。美佐子さんが登場するや、レゲエやロックのファンで賑わう会場に穏やかで静かな空間が生まれた。彼女はジュゴンの海に向かって歌い、そしてするりと舞台を降りた。ただそれだけの闇夜の辺野古だったが、この女性の持つ力は充分すぎるほど。静かに聴く、のではなくて、息を呑むように聴かせてしまうのが彼女の「島のうた」だった。
琉フェス'07も、そんな格別の不思議が会場を包むことを期待する。
大工哲弘も久しぶりの日比谷だ。ご存知のようにジャズマンらと様々なセッションを重ね、さらには三線一挺を手に世界を駆け巡った彼だが、今回の抱負はと訊けば、ひとこと「シンプルに」だった。八重山の麒麟児と謳われた70年代。その日比谷野音での初めての舞台を思い出しながら、彼は古里の名歌を東京へ持ち込むと語る。
「世界的」ということでは、奄美(加計呂麻島)の朝崎郁恵も同じだ。ニューヨークはカーネギー・ホールでのコンサートやキューバ公演での成功だけでなく、その幻想的なボーカルはサウンド・クリエイターである細野晴臣や、UAたちの心をも捉えた。特に97年のミニ・アルバム『海美(あまみ)』は、いわゆる島唄ブームとは別次元のロング・ヒットを続け、沖縄をふくめた島唄の可能性を大きく広げた一作として高く評価されている。そしてそんな朝崎さんが、昭和も10年の生まれだというのがまた素晴らしいではないか。
いっぽう、伝承歌を発展させる若手……というよりも、もはや「島のうた」を推進する中心的な立場となった
パーシャクラブや
大島保克、
よなは徹も、今回どんなステージを見せてくれるのだろうか。
パーシャクラブは、ご存知、石垣島・白保出身の新良幸人をリード・ボーカルとするバンドだ。パーシャがユニークなのは、新良はもちろんのこと、バックをつける上地正昭(ギター)たちもおしなべて島の伝承歌に習熟している……そんな人たちが「洋楽的アプローチ」で沖縄に光をあてるのだ。彼らは昨年夏に「七月節」を県内でヒットさせたが、急がず騒がずのパーシャらしい、ふところ深いうたに仕上がっていた。
新良の後輩、
大島保克もまた静かに熱い。うたの深淵を求めて旅をするこの孤高の存在も、今や周囲に集う様々なジャンルの個性派とユニークな共演をするようになった。たとえば昨年話題になった、吉永小百合の朗読CD『第二楽章 沖縄から「ウミガメと少年」』(野坂昭如・作)の音楽を担当したのもその一つ。島の歴史に対する「野坂-吉永-大島」の共通の思いが確かな形となって表現されたいいアルバムだった。続いて、今年の春に彼は、ジェフリー・キーザーとのコラボレーション『
大島保克 with ジェフリー・キーザー』を発表したばかりである。
本島の琉球古典・伝統的大衆歌謡(島唄)……そのどちらにおいても次代を担うと言われるのが、
よなは徹。「琉球古典音楽野村流音楽協会・教師(三線)」「国指定重要無形文化財<組踊>伝承者(太鼓)」ほか、さまざまな肩書と受賞歴を持つ彼だが、沖縄での重鎮との共演だけでなく、津軽三味線からブラジル音楽にいたるまで、引っ張りだこの毎日だ。そして何より、小さな頃から修行に努めた成果が、日ごとステージにはっきりと現われるようになったのが嬉しい。そのしっとりとしたボーカルと三線の色合いを、この琉フェス07でぜひとも体験していただきたい。
琉フェスの常連になりつつある桑江知子も、独自の「島のうた」を作りはじめた。ご存知のように彼女は、これまでポップスの世界で活躍してきたシンガーだが、今は古里へ急接近、たとえば最新作『カジマヤー 風車』では、ブラジリアン・テイストを土台に宮古島や本島の古謡・歌謡曲を都会的に色を塗り替えて、洒落たアプローチで聴かせるのだ。桑江さんの洗練は、東京に根付く「島のうた」の流れを築くやも知れない。
そして池田卓と、かりゆし58。
もしかしたら、この若い2組を一番に待っている人が多いのかも。
池田卓は、映画『えんどうの花』(06年)に主演し、さらにファンをつかんだ。西表島出身、野球で鍛えたしなやかな体、優しいあの歌声。「島の人よ」(2000年)から始まった「すぐる伝説」は、いつヤマトへ進出するの?という期待と共にあったが、彼は「このままで、島で歌をつむぐ」という道を選んだのだった(だからなおのこと、熱狂的なファンが)。最新作『やえやまのみんなのうた』の、題名どおりの池田が三線片手にステージへ。
糸満の新人ロック・バンド、かりゆし58も、いかにも今の「ウチナーのうた」をテーマに、初登場だ。彼らは昨年の「恋人よ」でブレイク、そして話題の「アンマー」(おかあさん)で日本有線放送大賞新人賞を受賞した。沖縄ローカルであることの気概。若い南洋のうたごえが日比谷に響きわたる。
なお今回の司会は那覇出身の2人組、キャン×キャンが担当。琉フェスは沖縄からの新しい笑いを紹介することでも知られるが、彼らはラジオ日本「笑ってE-じゃん!」で第1回グランドチャンピオン大会でチャンピオンとなるほか、今のぼり調子の注目株だ。
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大工 哲弘インタビュー「私にとっての琉フェス'07」