アメリカの深南部に深刻な被害を与えたハリケーン・カトリーナの襲来から丸1年を迎える。
2006年の今年、開催が絶望視されていたマルディグラもなんとか行われ、観光拠点であるバーボン・ストリートにも人が戻りつつあるものの、復興の進まない地域も多く、相当数の住民もかつての生活の場に帰って来てはいない。
ハリケーン・カトリーナは、昨年8月29日に米・メキシコ湾岸に上陸(正確には再上陸)し、広大な地域に深い傷跡を残した。ブッシュ大統領は、この28日から
ニューオーリンズなどを訪問する予定だが、それに先駆けて連邦政府の復興担当者が記者会見を開き、
ニューオーリンズの8割のホテルが営業を再開したなど明るい情報を提供すると同時に、当初、最高額1100億ドル(12兆8000億円)と計上されていた復興資金のうち、実際に事業へ投入されたのは440億ドルに過ぎなかった、とも発表した。
住居やインフラ(道路や堤防ほか)などの再建のための資金投入は、ようやく始まったばかりともいう。
ブッシュ政権はこれまで、ハリケーンに対する危機管理や、実際の復興に対して、積極的でなかったことは様々な場面で指摘、批判されてきた。
たとえば、カトリーナの上陸前に大統領や国土安全保障省長官が、連邦緊急事態管理局(FEMA)から、現地の堤防が重大な危険にさらされているとの説明受けていたこともわかっている。しかし、FEMAのブラウン局長(当時、後に辞任)が地域の救援を訴えたものの、この時、夏休み中だった大統領は「準備はできている」とだけ応じたという逸話は有名だ。
「1周年」を迎える、現地での大統領の発言、行動が注目される。
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以下は、産経新聞の電子版(2006年2月15日)に載った「米ハリケーン復興資金 入れ墨、ギャンブル、結婚指輪… 数百万ドル相当無駄」と題された記事である。
はたしてアメリカ文化の心臓部が、元に戻るのは、いつのことになるのだろうか。
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昨年夏のハリケーン「カトリーナ」の復興資金として連邦緊急事態管理庁(FEMA)が支出した八百五十億ドル(約九兆九千七百億円)のうち、数百万ドル相当が詐欺の被害や無計画な支出で無駄遣いされていたことが、米会計検査院(GAO)が十三日にまとめた報告書で明らかになった。カトリーナへの対応に関する米下院の調査報告書が十五日に発表されるが、米政府の早期対応の遅れだけでなく、復興資金の活用の面でも課題が浮き彫りになった。
調査は、これまでに使われた八百五十億ドルの復興資金の流れを調べた。報告書によれば、被害者救済のために一家族あたり二千ドル分のデビットカードが提供されたが、受け取った一万一千人中、約五千人が二重にカードを不正取得していた。
また、このカードが本来の目的である家の修繕や生活費に使われるのではなく、ギャンブルや娯楽、四百五十ドルかかる入れ墨、千三百ドルする拳銃、千百ドルのダイヤモンドの結婚指輪の購入に利用された例があった。米司法省は、不正に救援資金を取得した二百十二人をすでに告発し、すでに四十人が有罪の判決を受けたことを明らかにした。
また、FEMAが、ハリケーンによる洪水被災者のために八億五千七百八十万ドル(約一千億円)をかけて用意した二万四千九百六十七戸のトレーラーハウスと四千万ドル(約四十六億八千万円)をかけた千二百九十五戸分のプレハブ住宅のうち、計一万七百七十七戸が使用されないまま放置されていることも明らかになった。
一方、国は、家を失った被災者のためにホテルでの宿泊費を提供していたが、中には一泊四百八十三ドルのニューヨーク市内のホテルやフロリダ州パナマ市の一泊三百七十五ドルのコンドミニアムに宿泊していた被災者の例もあった。ホテルの宿泊費提供については、FEMAは、被災者がアパートや政府提供のプレハブ住宅などへの転居を前提に中止することが決まった。
カトリーナへの政府の対応をめぐっては、米下院特別委員会が、ブッシュ大統領やFEMAを統括する国土安全保障省のチャートフ長官らの「判断ミスが対応のおくれにつながった」とする報告をまとめ、十五日に公表する。チャートフ長官は十三日の記者会見で、こうした批判に対して、「テロ対策同様、自然災害についても十分な目配りをしている」と反論した上で、千五百人の職員を新たに採用することなどによってFEMAの体制を強化する方針を明らかにした。
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