現代版組踊「大航海レキオス」(4):本来の沖縄の姿に光を! 
Beats21
文・藤田正

「大航海レキオス」の東京公演が決定した。
 日程は8月25日(木)から28日(日)、場所は世田谷パブリック・シアター(三軒茶屋)だ。出演者の大半が十代から二十代という、若い世代が伝える「オキナワ」。彼らは古(いにしえ)の琉球人に学び、未来へと旅立つ。
 6月2日、本公演に先駆けて東京へやってきた二人の中心人物、平田大一(演出、写真左)と松永太郎(音楽監督)に話をきいた。

 平田大一は1968年、八重山の小浜島の生まれ。演出家。かつては「南島詩人」を名乗り、詩、歌、舞台などと精力的な活動で知られた人物だった。本島・与勝地域(与那城、勝連)の少年、若者たちを集めた舞台「肝高の阿麻和利」(きむたかのあまわり)は、これまでの「沖縄正史」にまっこうから異議を唱え、米・同時多発テロの時期にあっていちはやく非戦のメッセージを伝えたことでも高く評価された(旧・勝連町きむたかホール館長)。
「大航海レキオス」は、大ヒット「肝高の阿麻和利」の流れを引く舞台でもある。
 松永太郎は、その平田大一とコンビを組み若い人たちをまとめる。74年、鹿児島県に生まれ、99年に沖縄へ移り住んだ。「肝高の阿麻和利」での活躍に続き、「大航海レキオス」ではレキオス・バンドを率いて音楽を統括する。
  
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平田「阿麻和利の舞台とレキオスは、きょうだいみたいなものですね。阿麻和利がなかったらレキオスはなかった。ぼくはこれまで、勝連の……今は『うるま市』の一部になりましたけど……阿麻和利を逆賊としてではなく誇り高き英雄として描いたりと、自分なりに沖縄の色々な地域の歴史を紹介してきました。今度の『大航海レキオス』は、地域としての沖縄を紹介する、というイメージですね。本来の沖縄の姿に光を当てるのがぼくの仕事だと思っていますから」
----本来の沖縄を見つめること、それが若い人たちの未来につながってゆく。
平田「ぼくがやっているのは、トビラをあけることです。ぼくも『正しい沖縄』なんて知りません。ただ劇中にかならず現代の人を出すというのは、今と昔は必ずつながっているんだということなんです。今と昔を交差させることで、みんなに考えるきっかけを与えたい」
----舞台の運営、組み立て方にしても、平田さんは出演している若者たちに任せている部分が大きいですよね。
平田「演出家の意見は絶対、というのが嫌なんですよ。それぞれが一つの目的に向かって進むスペシャリストでしょ。分業です。小さな役者たちにしても、みんなが独自に考えることで、こちらが驚くような意見が出てきたりしますから」
松永「スポーツのチーム作りと同じだと思います」
平田「たとえば、臼井麻耶ちゃんという小学4年生が『風』という役をやっているんだけど、この子はオーディションの時になぜか中国の歌を歌ったんですよ。お母さんが中国の方だからなんですかね。その歌にしても、彼女の考え方にしても、とてもユニークで、ぼくらは彼女に出会ってから『風』を原作にない大きな存在にしてしまったんです」
----レキオスの特色の一つとして、三線の神様(赤犬子)まで出てくるのに、いわゆる三線音楽はやらないんだよね。むしろ曲はポップス。
松永「そうですね。沖縄と言えばみんなが自然とイメージしてしまう音楽じゃないです。ぼくがカッコいいと思っているのは、三線が入らない、古くからのトナエだったり、クドゥチ(口説)だったり、ウシデーク(臼太鼓)だったりするから。それに沖縄だから三線を使えばいい、というんじゃなくて、あくまで精神性に重きを置きたいんです。ぼくは自分のイメージを大切にしながら、音楽を作ってきたから」
平田「ぼくは八重山の出身だから、松永が言うことはわかる。原始的な(三線を使わない)シャーマンのトナエのようなものに、すごく惹かれる」
----八重山は、本島系、あるいは琉球王朝の文化とはまるで異なる部分があるからね。そういう点でも、平田さんと松永さんのやっている舞台は、沖縄を別の視点から見ている。月並みな常識とはズレている。歴史物語なのに王家のお偉いさんを、まったく無視してるし。だから、歌と踊りがあふれている楽しい舞台なんだけど、よくよく考えると、その背景にはかなり強いメッセージが込められている。
平田「原作の三隅治雄さんも、庶民を描きたいとおっしゃってましたけど、ぼくらもまさにその通りなんです」
----勝ち組、侵略者の視点ではなくて。
松永「そう。それが沖縄・琉球の(新しい)歴史、考え方と重なってゆく」
----侵略することなく、交易することによって生きてきたウチナーンチュの歴史、と。
平田「そしてもう一つ。ぼくのもっとも大切なルーツというか、テーマというか、それは家族なんですね。このレキオスに出てくる若い主人公たちは、家族という意味では、みんなどこか欠けている。ある人は父親さがしだったり、みんな幸せじゃない。だから彼らは故郷の沖縄を出て大航海に出る。これって、昔の話のようでいて、今の沖縄であり日本の姿でもあるとぼくは思う」
松永「出演している若い人たち、子どもたちそれぞれが、そのことを真剣に考えている。ぼくらも教えられることが多いです」
平田「レキオスが、自分の家族や故郷をもっともっと深く愛するきっかけになってくれれば、いいですよね」


「大航海レキオス」東京公演スケジュール&チケット:
http://www.mandicompany.co.jp/hp2005/live/requios/requios_05.html

( 2005/06/04 )

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