『Honkin' on Bobo』(写真)とは、どう訳していいのか、ちょっと難しい。honkもboboも黒人系の俗語で、どちらも性的な匂いを濃厚に表わしている題名である…つまり、「ぼぼ」と聞いて、日本のある地域の人たちであれば赤面して思わず飛び上がってしまうあの感じを、
エアロスミスはニヤリと笑いながらタイトルに使っているのだ。
野卑で、エロチックで、騒々しくて。かつての
ブルースは、アメリカでは最底辺の社会に存在する音楽だった。そしてそれだからこそ
ブルースは支配層の若者たちの心を捉えたのである。
ブルースは、上辺だけを取り繕ったような白人音楽と異なり、自分の感情にウソをつかない、生きるためのエネルギーにあふれた音楽だったからだ。
「ボボに乗っかってホンクしている」このアルバムも、その
ブルース精神に乗っかったイヤラシさが充満している。アルバムは、ロックンロールのオリジネイターの一人、ボ・ディドリーの「ロード・ランナー」から始まり、ニューオーリンズR&Bの雄、スマイリー・ルイスによるハード・ブギ「シェイム・シェイム・シェイム」へと続いてゆく。
エアロスミスの
ブルース回帰(黒人音楽再訪)は、自分たちの現在のスタイルを壊すことなくハードなサウンドで終始する。70年代のデビュー当時、ローリング・ストーンズのコピー・バンドと揶揄され、エリック・クラプトンが在籍したヤードバーズらイギリスの「
ブルース学の先輩たち」の影響下にあったアメリカン・バンド、
エアロスミスではあるが、このアルバムを聴くと、
ブルースや60年代のブリティッシュ・ロックを経過し自分たちならではのサウンドを確立した様子を音楽の味わいの中から感じ取ることができる。
たとえば3曲目のサニー・ボーイ・ウィリアムソン(ライス・ミラー)の名作「アイサイト・トゥ・ザ・ブラインド」。これは戦後の典型的なデルタ系
ブルースだが、ここで粘っこいボーカルを聞かせるスティーブン・タイラー、そしてスライド・ギターには、同じ50年代のエルモア・ジェイムズの影も見ることができる。
ブルースが、どのような道のりを辿りながら、エアロのようなサウンドへとつながっていったか、「へぇ、そうか!」と思わせる。
日本盤には、最近の彼らの代表曲「ジェイディッド」(2001年)もボーナス・トラックとして追加されている。
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