リップ・スライムRIP SLYMEは、RYO-Z、ILMARI、PES、SUの4人のMCと、FUMIYA(DJ)からなるヒップホップ・チーム。1993年に幼なじみのRYO-ZとILMARIがこのチームの母体を作った。
多色のボーカルが登場するというチームの構成に加えて、バンド的なサウンド・アプローチが、どこかウェスト・コーストの
ジュラシック5との共通性を感じさせるグループである。メジャーからのデビュー・アルバムとなる『FIVE』(east west、写真)は、ILMARIが現在大ヒット中の
ステディ&カンパニー「STAY GOLD」の構成員でもあり、注目度が高まった時に併せてのリリースとなった。
リップのカラー、ノリをよく表わしているのがトラック8の「Talk to me」。謎のエイコ・ママによる、メチャクチャ礼儀正しい幼稚園の保母さんのような語りかけの曲である。
アルバムの構成としては「中休み」的な曲なのだが、エイコ・ママによる、「さあ(リップで)泣いて、さあ笑って!」という、いったい誰に向かってこんな濡れた声を張り上げているのか分からないブキミサ、オフザケから、リップのリップらしさが覗くことができる。
イントロ的な「RS5」にはじまって、トラック2の「STEPPER'S DELIGHT」「Fresh」「運命共同体」と、例のトラック8「Talk to me」へ向かって突っ走ってゆくアルバム前半がとても小気味よい。
ニューオーリンズのブラス・バンド(セカンド・ライン)を起用したトラック5「Judgement」がスピーカーから鳴り出すころには、もうご機嫌だ。演奏はブラック・ボトム・ブラス・バンドと、日本一のニューオーリンズ・ピアノ、KYON(キョン)。アナログ&一発勝負的なノリが存分に味わえる、日本では珍しいヒップホップと言えるだろう。
同じくブラス・バンド(航空自衛隊航空音楽隊)を起用したトラック9「雑念エンタテインメント」も、この音はサンプリングだが、リップの柔らかいセンスを感じさせる曲になっている。
ラストを飾る彼らの代表的1曲「マタ逢ウ日マデ」(これが、何かむしょうに熱い)に至るまで、確かな手応えを味わえるリップのメジャー・デビュー・アルバムである。