すでに幻の芸能?…門付け芸「万歳」を大阪で見た
図録(大阪人権博物館)
 現在の「漫才」は二人芸。ボケとツッコミという役割分担が基本で、しゃべくりだけが「武器」だ。「漫才」という文字を考えついたのはヨシモトだけど、そのルーツのルーツが、「万歳」あるいは「萬歳」という漢字をあてる祝祭芸だった。こちらは太夫と才蔵の二人がめでたい言葉を述べ、鼓でポコポコ囃して、みんなを笑わせた。
 沖縄の京太郎(ちょんだらー)ほか、かつては各地にこの「万歳さん」がいて、旧正月を中心に門付けしてまわったのだ。
 でもそういうことって今は昔。実際に彼らを見た、それも私の家に来た、という人はごくごく限られているはずだ。
 大阪の人権博物館(リバティおおさか/浪速区)では、11月11日まで「万歳〜まことに めでとう そうらいける」という特別展をやっていて、これが充実している(常設展もすごくいい)。長い歴史の中で差別を受けながらも日本の大衆芸能に重要な貢献をしてきた「万歳」を知るにはかっこうの企画、この10月27日には「万歳競演」として、神道三河万歳若杉流、伊勢万歳の村田社中、尾張万歳保存会の三つが舞台にのぼった。
 現在の漫才の本場である大阪でやったこともあるのだろう、会場となったリバティホールは立見がでるほどの大盛況で、約2時間、シモネタの連発に女性陣が引いてしまう場面もあったものの、全体にとても楽しく、また興味深いライブだった。
 最後にやった、三味線や胡弓をまじえての「三曲万歳」は、演目は「仮名手本忠臣蔵」のパロディで、それはまるでニワカ狂言であり、またのちの音曲万歳(かしまし娘みたいな、三味線を持った、歌としゃべくりによるスタイル)ともそっくり!
楽屋での中川さん(左)と村田さん(Beats21)
 一番に良かったのは、村田清光さん(太夫)と中川晃さん(才蔵)のコンビによる万歳で、村田さんの鍛えぬかれたノド、ボケにボケまくる中川さんの姿には、まさかナマでこの二人を見ることができるとは思ってはいなかったこともあり、とっても感動してしまったのだった。
 この時のレポートは月刊『部落解放』(2007年12月号)にも書いたので、そちらも読んでいただけたらと思う。
(藤田正)
 *大阪人権博物館(tel 06-6561-5891)

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( 2007/11/01 )

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