Beats21では「
輸入盤がCDショップから消える日は近い?」の記事で、すでにお伝えしているが、近々に衆議院を通過しそうな「
著作権法の一部を改正する法律案」に反対しようと、350名を超える音楽評論家やカメラマン、プロデューサーたちが「
著作権法改定に関する意見書」を発表した。
メジャー〜業界中枢の気持ち次第で、輸入盤が買えなくなる可能性を持つこの法案。Beats21では、アピール文の全文をアップした。
なおアピール文には、大貫憲章(音楽評論家)、小野島大(音楽評論家)、北中正和(音楽評論家)、高橋健太郎(音楽評論家/プロデューサー/エンジニア)、ピーター・バラカンといった人たちが名を連ねている(Beats21代表の藤田正も署名に参加)。
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著作権法改定に関する意見書>
音楽が殺される……?
法律によるCDの輸入規制に私達は反対します。
現在国会に「
著作権法の一部を改正する法立案」が提出されていますが、そこには世界各国の音楽レコードの輸入が禁止できる条項が含まれています。当初、それは主にアジア生産の安価な邦楽CDの逆輸入を規制するためのものと説明されていました。ところが国会の答弁の過程で、日本の音楽ファンが日頃から親しんでいる欧米などからの洋楽の輸入盤CDも「輸入権」というものによって輸入禁止されてしまうことが明らかになったのです。つまり……
●音楽を自由に聴けなくなる?
欲しいCDが買えなくなったり、いつのまにか高くなっていたり、これまでふつうに買えていた洋楽の輸入盤が、買えなくなる可能性があります。
日本発売されている作品の輸入盤が、レコード会社が「輸入権」を行使すると、輸入禁止になります。まだ日本発売されていなくても、日本発売された瞬間に、売ることばかりでなく、在庫を所持していることも違法になるので、日本発売予定がある作品の海外盤は、事実上、輸入することができません。買いたいCDがあるのに、日本盤も輸入盤もなくて、どこを探しても買えなくなるということも起きるのです。
日本発売予定がなくても、いつ、日本盤が出て、違法行為とみなされるか分からないので、レコード店や輸入業者は、これまでのように世界中のさまざまなCDを自由に輸入することが困難になります。輸入盤の種類は大きく減り、値段はとても高くなるでしょう。
個人輸入は認められています。でも、個人使用のためのCDであることが証明されないと、自分で聴くために海外で買ってきたCDや、海外から通販で買ったCDが、税関で差し止められたり没収されたりするかもしれません。
私たちは、消費者に多大な不利益を強いる法案の内容に強い危惧を持っています。
●ぜんぜん話が違うよ!
法案の目的はアジアの安い邦楽CDの逆輸入防止じゃなかったの?
文化庁は、ずっとそう説明し続けています。でも法案では、邦楽の逆輸入盤と洋楽の輸入盤を区別していません。邦楽CDの年間売り上げは、1億7000万枚。邦楽の逆輸入CDやカセットは68万枚。そのたったの68万枚を防ぐという名目で、年間6000万枚を売り上げる洋楽の輸入盤まで規制しようとしているのです。
参議院では、日本レコード協会から「一般の輸入盤を規制するつもりはない。アメリカの大きなレコード会社もそう言っていると聞いている」という旨の発言がありました。ところが、その後になって「日本政府に対して、楽曲の種別を問わず輸入を制限することを要求する」という、全米レコード協会と世界レコード制作者協会からの強硬な意見書が文化庁に送られていたことが判明しました。
私たちは、この矛盾を許容できません。アジア盤の邦楽CDの逆輸入防止を目的とするならば、それを法案に明文化することを求めます。
●音楽に国境を作るな!
音楽ってもっと自由で多彩で豊かなものだったはず。
音楽は言葉や主義主張や文化風習を超えた何かを、私たちに語りかけてくれます。そうしたさまざまに異質な価値観がぶつかりあい、混ざり合うことで、より自由で多彩で豊かな音楽が、世界中で作られてきたのです。
現在の日本では、世界中のさまざまな音楽のCDが気軽に入手できます。それは、過去何十年にも渡って日本の音楽ファンが作り上げてきた「輸入盤」文化の賜です。日本のアーティストたちは、そんな素晴らしい環境で音楽を聴き、血肉としながら、新たな自分たちの音楽を作ってきました。しかし法案がこのまま成立すると、そうした環境が失われる可能性があります。それは邦楽を含めた日本の音楽文化と音楽産業全般の衰退に繋がりかねません。
このように、日本の音楽文化の未来に、消費者の利益に、大きな打撃を与える輸入盤の規制に、私たちは強く反対します。
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