今回の
著作権法改正案は、中国などアジアで作られた邦楽商品が日本国内へ輸入され、国内版よりもずっと安く売られていることに頭を痛めた大手レコード会社の意見を反映している。日本のトップ・アーティストのアルバムが、駅前のワゴン・セールで、CDショップの半値ほどで販売されている。そんな光景を見た方も多いだろう。
間違ってはいけないが、これは海賊盤ではない。日本のレコード会社と正式な契約を結び各国で複製された商品である。
このアジアからの還流を防止することを第一義とし、加えて、著作権の保護をうたっているのが今回の改正案の骨子である。
再販制度に守られた日本のCDを、さらにこのような法案で「守ろう」とすることだけでも理解に苦しむが(正規の契約をしているのに著作権の保護というのも実に奇妙だ)、同法案は、日本版が存在する洋楽CDにも適用されるということである。
つまり、ビートルズのイギリス・プレスのCDの輸入に規制をかけ、同じ(だが値段の高い)日本プレスのCDだけを流通させることが可能になる、という法案なのだ。
この背景には、音楽ソフトが売れない、CDなどのパッケージ商品を否定しつつあるデータ送信ビジネスの成長、コピー・コントロールCDの是非など、さまざまな問題がある。
だが、それらの問題との関連を考える以前に、今回の法案は、規制をかければ権利と利権を守ることができる、という安易な考え方に基づいているはずである。
もっと自由に、できうる限り壁を作らず、みんなが音楽を楽しめるような場(マーケット)を提供するという姿勢が基本になければ、現行のレコード・ビジネスは尻すぼみとなり、新しいノウハウによって否定される。それは音楽史を紐解けばわかることだ。
業界の未来にとっても、これは大変に危ない改正案のはずである。
みなさんの御意見は、いかがだろうか。
(藤田正)