『風都市伝説』は、はっぴいえんど、あがた森魚、はちみつばい(
鈴木慶一ら)、乱魔堂などのマネイジメントをやっていた「風都市」というオフィス(企画集団)が、どのように形成され、消滅していったかを、数多くの関係者の証言をもとに辿るものである。
風都市の活動を通じて、70年代初頭のほんのわずかな時間が、その後の日本のポップ・ミュージックにとっていかに大きかったか、そして、当時の東京のロックやフォークがどのようであったかを、細かに知ることができる。
渋谷の小さなロック喫茶に無名の若者たちが集って、という時期から、徐々に風都市を中心とした人たちが業界の台風の目となっていく。しかも、音楽そのものも、機材も、ライブも、お金も、すべてが手探りで、というのがいかにも「あの時代」らしい。
風都市やはっぴいえんどは、東京のお坊ちゃんみたいで違和感があったという、彼らのもう一つの真実を突いた発言(阿部登)も出てくる。
細野晴臣らはっぴいえんどの旧メンバーはもちろん、
松任谷由実、
山下洋輔など、今や大御所となった人たちの言葉も面白く、また考えさせられる。