「風都市」伝説と「はっぴいえんど」伝説
Avex io
 8枚組の『はっぴいえんどBOX』(写真)が発売されて、はっぴいえんどの再評価も決定的となった。このアルバムは、初回限定受注生産、ライブ映像や写真画像(CD-EXTRA)ほかも付いて、全ディスクをメンバー監修のもとでリマスタリングするなど、いかにも彼ららしい凝った全集となった。
 日本のロック、というよりも、日本のポップ・ミュージック全体に大きな変革を促したバンドの一つだけに、この全集には無数のアイデアが詰まっていると言っていい。また仲間割れして久しい彼らだけに、表に出ない裏方たちは、この全集完成のために大変な苦労をしたことが予想される。お疲れさまでした。
 この話題作と同時期に発売されたのが『風都市伝説』(北中正和責任編集)という書籍である。伝説のバンドが生まれた「70年代の東京ロック・シーン」の様子を、細かくドキュメントして面白い。
Amazon.co.jp-『はっぴいえんどBOX』
Amazon.co.jp-『風都市伝説―1970年代の街とロックの記憶から』
矢吹申彦/音楽出版社
『風都市伝説』は、はっぴいえんど、あがた森魚、はちみつばい(鈴木慶一ら)、乱魔堂などのマネイジメントをやっていた「風都市」というオフィス(企画集団)が、どのように形成され、消滅していったかを、数多くの関係者の証言をもとに辿るものである。
 風都市の活動を通じて、70年代初頭のほんのわずかな時間が、その後の日本のポップ・ミュージックにとっていかに大きかったか、そして、当時の東京のロックやフォークがどのようであったかを、細かに知ることができる。
 渋谷の小さなロック喫茶に無名の若者たちが集って、という時期から、徐々に風都市を中心とした人たちが業界の台風の目となっていく。しかも、音楽そのものも、機材も、ライブも、お金も、すべてが手探りで、というのがいかにも「あの時代」らしい。
 風都市やはっぴいえんどは、東京のお坊ちゃんみたいで違和感があったという、彼らのもう一つの真実を突いた発言(阿部登)も出てくる。
 細野晴臣らはっぴいえんどの旧メンバーはもちろん、松任谷由実山下洋輔など、今や大御所となった人たちの言葉も面白く、また考えさせられる。
 

( 2004/04/28 )

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