『スナック・マミ』は、さらに年代を上に設定し、今の50代のオヤジに焦点を当てたかのような演歌もののオムニバスだ。
ラインナップは、松尾和子「再会」、藤圭子「圭子の夢は夜ひらく」、加藤登紀子「ひとり寝の子守唄」、梓みちよ「二人でお酒を」、北原ミレイ「ざんげの値打ちもない」といった、30年ほど前の「女唄」のヒットである。
この中で最も迫力があるのは、なんと言っても青江美奈。すでに故人となった青江だが、その強烈でエロチックなハスキー・ボイスは唯一無二の存在であったことをこのアルバムでも証明してくれた(「池袋の夜」「新宿サタデー・ナイト」の2曲を収録)。
60年代の西田佐知子(関口宏の妻)もそうだが、こういうスタイリストはもっと再評価されるべきだろう。
このほか松尾和子のメランコリックな「再会」が、ム所に入ったヤクザ者の情婦の歌であることなど、今では考えられない設定もある。藤圭子らの歌もそうだが、人生に翻弄され過去を引きずるこれらの歌から理解できることは、当時の「女唄」とは<夜の蝶>という一定のイメージの中へ押し込んだ上で「醸造・醗酵・瓶詰め」したものであるということだ。それをバカな男たちは、「女の真実」と手前勝手に鵜呑みにし操られ酔っ払っていたことを、しみじみと納得させてくれるオムニバスとなっている。
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