「ゲット・ハッピー」「イッツ・オンリー・ア・ペイパー・ムーン」「虹の彼方に」など、20世紀のアメリカを代表するソング・ライターの一人、ハロルド・アーレンの作品をハル・ウィルナーが現代風に見事にまとめた。
デビー・ハリー、デビッド・ヨハンセンなどかつては
パンク〜
ニュー・ウェイブで活躍したミュージシャンほか、独特の人選はハルならでは。
アルバム『ストーミー・ウェザー』(ソニー)は、『セプテンバー・ソングス〜9月のクルト・ヴァイル』の流れを汲むコンセプト・アルバムで、歴史的な作家の作品に現代の風を当ててみようというもの。ただルー・リードやニック・ケイブが登場して話題となった『セプテンバー…』もそうだったが、無理やりに前衛的にしようとするのではなく、長く押入れに仕舞ってあった貴重な楽譜に新鮮な空気を当てた…というようにオリジナルを尊重したプロデュースがされている。
バン・ダイク・パークスがアレンジしタクトを握った「イッツ・オンリー・ア・ペイパー・ムーン」(歌、ルーファス・ウェインライト)にしても、パークスならではのヒネりを効かせたオーケストラ・アレンジで、また、一発録音による気迫ある作品にしあがっている。日本語の解説に各曲の背景が書いてあれば、ウィルナーが各所に散らせたウィットの意味がよくわかったはずだが、それを置いても、1930年代のオリジナル録音(ボズェル・シスターズ)が飛び出したあとで、スライ&ザ・ファミリー・ストーンを念頭に置いた
ファンク・ロック・アレンジの「ゲット・ハッピー」(歌、エリック・ミンガス)へとつなげる趣向にしても、すっきりと上品に聞かせてしまうのがウィルナーの手腕だろう。
Beats21推薦CD『ストーミー・ウェザー〜ハロルド・アーレン作品集』
Beats21推薦CD『セプテンバー・ソングス〜9月のクルト・ヴァイル』