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第2回ラテン・グラミー賞」(2001年10月発表)における「ベスト・サルサ・アルバム」に選ばれたのが、
ティト・プエンテ(ティンバーレス)とエディ・パルミェーリ(ピアノ)が双頭のリーダーを務めた『オブラ・マエストラ』である(題名は「傑作」の意味)。
すでに2000年に発売された作品だが、ニューヨーク・ラテン〜サルサの象徴的存在であったプエンテ(1923〜2000)の、これが実質的なラスト・アルバムとなったために、大物二人の共演盤という以上の関心を集めてきた。
共にバンド・マスターとして揺るぎない地位を築いたプエンテとパルミェーリである。しかし、このアルバムに関しては、パルミェーリによる基本的な編曲・構成にティトが乗って演奏しているという色合いが濃い。
たとえば、バンドネオンを使いタンゴ的な悲劇をイメージさせる「ラ・ウルティマ・コパ(最後の杯)」や、メキシコのマリアーチのメドレーに特徴的な、それぞれの音楽の個性を突出させてたままでサルサ・リズムの中に「はめこんで」しまう豪腕アレンジ、あるいは、大編成のオーケストラによる重量級の編成による筋肉モリモリの演奏と、ここ20年ほどのスムーズでアクのない歌謡サルサとはまるで正反対の「パルミェーリ方式」を、アルバム中で聴くことができるのである。
この大プロジェクトに集められたのは、ニューヨークを中心としたサルサの実力派、ベテラン数十名である。リード・ボーカルには、オスカル・デレオーンを筆頭に、マイケル・スチュアート、ジェリー・メディーナ、ヘルマン・オリベーラほか。プエンテと同じく2000年に亡くなったピート“エル・コンデ”ロドリゲス(1932〜2000)も「マルチャンド・ビエン」で素敵なノドを披露する。
この「マルチャンド・ビエン」は、サルサが本当にサルサらしかった時代を彷彿させるソン・モントゥーノ(リズム名)の佳曲だが、パルミェーリのソロ・ピアノといい、プエンテの(ソロを叩かない)リズム・キープといい、すべてのパートに「サルサ=プエルトリコ人の音楽」という味わいが溢れているのがたまらない。
サルサは、ニューヨーク&プエルトリコ人が母体であることを、その味わいではっきりと教えてくれる1枚が『オブラ・マエストラ』なのである。
「マンボ王」としてのプエンテにちなんだ「ピカディージョ・ジャム」や「エル・プエンテ・ムンディアル(プエンテなる至高)」、「パリス・マンボ」(歌、デレオーン)なども素晴らしい。その白熱の演奏の中に、凄腕のベテランたちの深い年輪を聞くことができる。
*Obra Maestra/Tito Puente & Eddie Palmieri(RMM 0282840332)
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