特集 STOP THE WAR!・沖縄からの声(1)----大田昌秀(参議院議員)氏
Beats21
 沖縄から今回の「戦争」を考える。
「歌の邦(くに)」が同時に「基地の島」でもある沖縄は、わたしたちにとって最も「身近」に戦争を感じる場所の一つであろう。
「STOP THE WAR!・沖縄からの声」、第1回目は、元沖縄県知事・現参議院議員の大田昌秀氏。学者でもあり、かつての沖縄戦における鉄血勤皇隊(学徒隊)の生き残りでもある大田氏が語る「歌の邦」の現実。
 インタビュワー:藤田正(Beats21)。
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■いったい誰から、誰を守るのか
----9月11日に米・同時テロが起こって、その後、アフガニスタンにアメリカ軍が進軍する。その過程で、日本の中では最も関連の深い沖縄、あるいは沖縄の基地がどうなっているのか、相対的に見えにくくなってきたように思えます。
 そうですね。ご存知と思いますが、今、沖縄に450名ほどの機動隊が行って、基地を守っているわけです。これは警察法第2条に従って行っていると。警察法の2条には個人の生命財産を守ったり、犯罪を未然に防止する法律であり、ただし、日本国憲法の基本的人権の尊重や自由を損なうものであってはならないとも書かれてある。
 しかし、基地内というのは治外法権であって、日本国憲法の適用を受けていないわけです。
沖縄県公文書館
 形の上ではできるだけ日本国憲法を大事にするとは言いながら、実際には、治外法権的になっているわけです。そこ(基地)を守る根拠とは何かと。  
 警察が言う根拠は警察法の第2条だと。しかし、第2条には米軍基地を守るなんてことは一切書かれていないわけです。
 米軍は基地を憲兵がズラッと取り囲んで、基地の外に向かっている。(では)機動隊が沖縄へ行って、基地の中に向かって守っているかというと、そうではなくて、基地の外に向かって「守って」いる。
 誰から誰を守ろうとするのか?
 復帰前の1971年に毒ガス兵器やサリンが、(基地内に)ものすごく貯蔵されていることが分かったことがありました。
 これを「レッド・ハット作戦」(毒ガス移送作戦)という呼称の元に、約8カ月かけて撤去させた。
 しかしこれも全部撤去されたか誰にもわからない。   
 (写真は『レッドハット作戦特別安全対策要綱』)
Beats21
 そしてその後、核密約がバレた。
 だから世論調査をすると6割から7割の人が沖縄に核があるという意識を持っている。
 そういうところで、仮にテロが沖縄に発生したら一体どうなるのか。これを我々は非常に心配しているんです。
----今、沖縄に化学兵器が持ち込まれているのではないか、という予測が立つと。
 そうそう。このあいだの湾岸戦争の時も沖縄から(軍用機が)飛び立っていますから。その時に再び持ち込まれたんじゃないかとか、色々と考えることができる。
 
■基地問題と激減する沖縄観光
 そして今回、機動隊が沖縄に行ったものだから、沖縄がターゲットになるのではという不安が高まって、観光客がストップしてしまった。
 だから県議会も全会一致で、沖縄は平常どおり安全であると決議したわけです。
 基地問題を出すと、危ないという印象を与えてしまう。そういうことを言い辛くなっている状況があります。かといって基地の危険度は減るどころか、かえって……。
 さらに今度の法律では、自衛隊が守ろうとするわけですから。
 非常に難しい問題です。    
 (写真は、県をあげての観光キャンペーン「だいじょうぶさぁー沖縄」の旗)
 今回のことも、どういう方法を取ったらいいか、考えているところです。
(私が所属する)社民党は少数派なものだから、議会で相手にされないわけです。
 理事会の理事も出してもらえない。オブザーバーという方式があるけれども、オブザーバーは最初から余計なことを言うな、ですから。
 だからまともな市民の声を代弁しようにも、伝わらない。 
 市民運動にしても、言い方は悪いかも知れないが、自己満足的な行動じゃなくて、ちゃんと担当大臣に会わせて、きちんと市民がどう考えているかを聞かせないと。
 沖縄でもどこでもコブシを上げても、全然伝わらないし、効果はないし。
 運動をやる人たちは声を上げたと思っても、それが活かされないと結果は惨めなものになってきますから、それが今一番、頭が痛い問題なんです。
 朝日新聞までもが新しい法律が必要だというような社説を書く時代になってきて、世論調査でも55%が賛成だと。
 そういう中でテロ新法反対だと言っても、それに代わる何をやるのかをちゃんと打ち出さないと。ただ反対じゃだめなんです。     
 実際に声が伝わるような方法はないものかと苦労しているんですが、あいも変わらず同じ手法でやろうとする。それが我々の一番、弱いところですね。
Beats21
■沖縄は歌を抜きにしては成り立たない
 ぼくが沖縄で一番買っている音楽家というのは、八重山の宮良長包ですよ。
「えんどうの花」とかね。
 またぼくが、どうしても今の若者に伝えたいと思うのは「健児の塔の歌」というのがあります(「健児の塔」は、鉄血勤皇隊として沖縄戦で死んだ学徒兵の慰霊し平和を祈念する塔)。
 宮古出身の方が書いたものですが、「来てみれば、いとど悲しき摩文仁嶽」という歌を作って、戦後一時、歌われておったんですが。今はまったく歌われなくなった。
 あの歌も復興したいと思っているんです。
 沖縄は歌を抜きにして成り立たないです。
 自分の所を(誉めて)言うのもなんですが、沖縄ほど歌が生活に密着している場所はないんです。三味線(三線)一本あったら、沖縄の人は幸せになれる。
 どこへ行っても。
 ハワイ、グアム、南洋群島、フィリピンも(沖縄の人がいる土地はどこでも)そうです。
 フィリピンの県人会へ行っても凄く歌は盛んです。
 ペルー、アルゼンチン、ブラジル、ボリビア……三味線一本あれば。
 これがないと、沖縄を救えないです。
Beats21
「艦砲の喰ぇーぬくさー」という歌がありますね。
----艦砲射撃でズタズタにされた沖縄を歌ったものですね。自分たちは艦砲射撃で「食い荒らされた」沖縄の、食い残しみたいなものだ、と。
 この間、ある集まりがあって、そこで「でいご娘」の女の子が一人、うちのオヤジ(比嘉恒敏)が作った歌ですがと「艦砲の喰ぇーぬくさー」を歌って。ぼくはびっくりしたんです。あの歌もぼくは好きですね。
----平和の象徴の歌があって、その傍に巨大な暴力装置としての基地がある沖縄。
 今の問題は日本全体の問題だとみんなが言い続けているけど、東京などにいるとピンと来ないですよね。
 昨日でしたか、地元の記者がやってきて言うには、記者自身も沖縄を離れて東京に住んでいると沖縄のことが遠くなるという実感がある、と。その通りです。
 ですから、ここ(東京)にいると痛くも痒くもないんです。  
----今だからこそ「観光」で、基地のある沖縄へ出かけたらと、ぼくは思いますね。
 そう、逆にね。こういう時期だからこそね。
■他人に痛め付けられても眠ることはできるが…
 歴史的に日本の平和と安全の問題について、絶えず沖縄が踏み台にされてきたという経緯があるけれども、全然みなさん知らない。また歴史学者もそういうことを教えないものだから、我々が沖縄の問題は日本の問題ですよ、防衛問題とは国家の根幹にかかわる問題であり、沖縄がそれを担っているんだと言っても、平然としていられる。
 沖縄には「他人に痛め付けられても眠ることはできるけれども、他人を痛め付けて眠ることはできない」という言葉があるけれど、本土の人たちは、自分が痛くなければ他人がどうなろうとかまわない、ということがある。それが、朝鮮半島とかアジア諸国から信頼されない点だと言うんだけども、なかなかピンと来ないんですね。
 だから根気強く、粘り強く分かってもらうしかないなと、ぼくは思ってます。
「艦砲の喰ぇーぬくさー」(1番)
  若(わか)さる時(とち)ね
  戦(いくさ)ぬ世(ゆ)
  若さる花ん 咲ちゆーさん
  家(やー)ん元祖(ぐぁんす)ん
  親兄弟(うぇちょーで)ん
  艦砲射撃ぬ 的になてぃ
  着(ち)る物(むん)
  喰(く)ぇ物(むん)
  むる無(ねー)らん
  スーティチャー喰(く)でぃ
  暮らちゃんや
  うんじゅん わんにん
  汝(いゃ)ーん わんにん
  艦砲の喰ぇーぬくさー
「艦砲の喰ぇーぬくさー」(1番・対訳)

 若りし時は戦争の世の中
 若き花も咲かし切れず
 家もご先祖も親兄弟も
 みんな艦砲射撃の的になり
 着るもの、食べ物、まるでなし
 (毒のある)ソテツまで食べて暮らしたんだよ
 貴方も私も あんたもオレも
 艦砲射撃で食い荒らされた
 残り物
(おわり)
関連サイト:

( 2001/10/26 )

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