ソニーは現在、「洋楽秘宝館」と銘打って同社のカタログから名盤〜レア・アイテムの復刻を始めている。
2001年8月22日にリリースされたエムトゥーメイ『ジューシー・フルーツ』(83年/写真)もその中の一つ。エムトゥーメイMtumeは、マイルス・デイビスのバンドを経て、このアルバムでブラック・ダンスの大注目株となった人物(パーカッショニスト)で、彼はこの成功により80年代の売れっ子プロデューサーの一人ともなった。
本アルバムは、ジョージ・クリントンのPファンクに多大な影響を受けたエムトゥーメイが、彼自身のファンク・サウンドを編み出そうと試みた作品とも言えるだろう。80年代前半らしい、打ち込みとシンセ・サウンドの「チープな」組み合わせが、時代の匂いをたっぷりとふりまいてくれる。
バンドのメンバーは、タワサ・エイジーがボーカル、エド・ムーア(ギター)、フィリップ・フィールズ(キーボード)、レイモンド・ジャクソン(ベース)。
ゲストとして、Pファンク・サウンドに欠かすことの出来ないキーボド奏者、バーニー・ウォレルも参加している。トラック6「Hip Dip Skippedabeat」など、奇妙にモゴモゴいうビートに女性コーラス、そしてグルービィなナレイションという組み合わせを聞けば、エムトゥーメイがウォレルからPファンク・サウンドの秘密を、どれほど教示されたかがわかる。これは、当時のトーキング・ヘッズにしても同じだった。
アルバム『ジューシー・フルーツ』で特筆すべきなのは、リード・ボーカルを担当したタワサの存在である。「Ready For Your Love」や、なにより大ヒットとなったタイトル・ソングでの力唱が忘れられない。彼女のボーカルは、典型的なソウルなのだが、今になって聞けば、ハウスなど80年代から90年代にかけて登場する新ダンス・ビートに起用された「ソウル・シンガー」と同じ(どこか生堅な)歌唱なのである。
タワサが、当時、この歌のヒットで引っ張りダコになったのには、こういう流行の先駆け的な感性を彼女が持ち合わせていたからだろう。
(おわり)
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