ウィントン・マーサリスと共に、ニューオーリンズ生え抜きのジャズ・トランペッター、テレンス・ブランチャードが、ジミー・マクヒューの作品を取り上げた。ジャズ・アルバムだけでなく『マルコムX』などの映画音楽でも成果をあげる彼だが、このアルバムはそんな彼にとっても代表的1作となるはずだ。
共演はカサンドラ・ウィルソン、ダイアン・リーブス、ダイアナ・クラール、ジェーン・モンハイトという、ベテラン、新進を組みあわせた4人女性ジャズ・シンガー。これだけでも注目盤である。
ブランチャードが取り上げたジミー・マクヒューとは、20年代からエリントンらに作品を提供した人物で、このアルバムのタイトルとなった「Let's Get Lost」ほか、「I'm In The Mood For Love」「On The Sunny Side Of The Street」などの名作を残した。
ブランチャードは、これらの歌に対して実に細やかな愛情を注いでいる。
そして、彼の、どんなに高音になっても刺々しさの見えないまろやかな演奏は、女性たちが持つそれぞれの個性を優しく包んでゆくのである。
愛に燃え上がる主人公を20代前半の若いモンハイト(白人)にうたわせ、華麗に、上品に仕上げてみせる「Too Young To Go Steady」など、さすがの腕前だ。
(2001年7月18日発売)