題名にある「フリムン」とはウチナー口で、アホのことだ。もともとは「ふれる(狂れる)」から出て、常軌を逸した者、という意味も持っている。
吉本興業はこの3月19日から「沖縄国際映画祭」を開催する。その中心にいるのが県出身者である
ガレッジセールで、ガレッジのゴリが初めて監督として撮影したのがフリムン・フィルムだった。
メディアでお馴染みの人気者が映画を作ることなど珍しくもないが、吉本興業はかつて『
ナビィの恋』という、登川誠仁を有名にした切なさたっぷりのヒット・フィルムを製作しており、沖縄好きならずともこのゴリ作品は気にかかるのである(ちなみに同映画のテーマ曲をプロデュースしたのがぼく)。
ましてや彼&川田は、われらが
SAVE THE CORALの応援団長。ぼくも、そうとうドキドキしながら試写をみせてもらった。
そして…、これが良かった。正統派のスプラスティック、ドタバタの喜劇で、カラダをバリバリに張ってこそ笑いが取れることを、主演でもあるゴリは身をもって示してくれた。
今の日本の笑いはずいぶん「進化」したけれども、『南の島のフリムン』は、キートンなどへの原点回帰かも?…とも思えたりして、まずこれが新鮮だった。
たとえば主人公は、米兵(ボビー・オロゴン)と決闘するハメになり、そのために沖縄空手の大先生(平とみさん!…あのナビィがここに登場!)に弟子入りするのだが、先生の命じるのは畑一面のサトウキビを徹底して刈るだけ、あるいは、海に落としたどデカイ石を素潜りで引き揚げに行かせるだけ、なのである。この「だけ」を徹底しているのが、なんだか可笑しいのだ。
一瞬、物語がダレるかな…と思いきや必ず「こつん」なり「ゴン!」といった笑いを入れて、飽きることがなかった。何度も繰り返される笑い…そして、それだからこそ、観ている者の体が温まったころのフィナーレの決闘シーンに、ぼくらはさらに「熱いもの」を感じてしまうのである。
ゴリにとっての「熱いもの」、それは当然、故郷を離れて暮らすウチナーチュのそれである。映画の中で徹底してエキゾチックに作りかえられたコザ(沖縄市)。その中に、フリムンはいる。フリムンは、もちろん主人公であり、周囲のヘンな仲間のウチナーンチュである……と前半は見せておいて、最後の米兵との決闘において、「バカヤロウ!と叫ぶ相手は<米軍支配>だ」と(笑いの陰で)訴えるのである。
いっしゅん映る、米軍キャンプの通用門に英字で「キャンプ・フリムン」と記してあるところに、なんとも言ず、ゴリ、そして川田の故郷に対する愛惜が感じられるではないか。
そしてもう一つ、ブタとの恋愛関係が素晴らしい。
諸見里大介が扮するヒトシが、ブタの「はなこ」と「いい仲」になるのだが、これには驚いた。かの沖縄の名画『ウンタマギルー』にも描かれていたが、かつての沖縄の民族的神話〜ルーツを、ゴリは現代劇のなかで堂々と持ち出している。ブタは古い沖縄において、食べ物であり、汚物を処理する存在であり、精神を癒す動物でもあり、人の生活と切り離すことのできない、すなわち「神」なのである。
「基地のマチ、コザ」という「典型的なオキナワ」を舞台にしながら、ゴリのセンスは光っている。引き続き、第2作もお願いしたい。
(文・藤田正)
沖縄国際映画祭公式サイト
http://www.oimf.jp/