高田渡の歌は、テンポものろのろとしていて、始まりも終わりも同じ感じの歌が多い。 だからいくぶん誇張して言えば、ボーッとして聞いているとずっと同じ歌が続いているように思えたりもする。
しかし、このユルユル感がなんとも気持ちがいい。沖縄の「
島唄」のように、ゆったりとした歌の流れの中に身をまかせる楽しみ。これが高田渡の大きな魅力であろう。
何も変わらない、いや、徹底して変えてこなかったガンコな高田は、年を重ねることによって彼の歌世界がますます深みを増したように思える。
当夜、彼はラストに代表的一曲「生活の柄」(詞・山之口獏)をうたったが、この日本の路上生活〜ストリート・ポエムの名作は、高田がこれからもっと「老人化」すればするほど光るであろうことが確認できた。
トリを飾った上々颱風(写真)は、高位安定のしっかりとしたステージだった。
彼らは9月19日に新作『心の花』がリリースするが、他の追従者をもたない唯一無二のバンドになっていることを、ここ真鶴の舞台でも見せてくれた。
(おわり)