モータウン・サウンドの秘密を描いたフィルム公開
シネカノン
 映画『永遠のモータウン』が面白い。
 マービン・ゲイダイアナ・ロスマイケル・ジャクソンほか、アメリカン・ポップの歴史に欠かすことの出来ない大レーベルの音楽的な内実に迫ったのがこの映画だ。
 高名なモータウン・サウンドを作り上げた無名のセッションマンを、温かい視線で追いかけ、心のこもった作品に仕上がっている。
 60年代のモータウンは、ダイアナ・ロスのいたスプリームズやミラクルズ、フォー・トップスほか、大ヒットを量産するアーティストをたくさん抱えていた。彼らシンガーの下で働いていたのが、ベニー・ベンジャミン(ドラム)やジェイムズ・ジェマーソン(ベース)らだった。彼らのサウンドの斬新さは、多くのミュージシャンによって指摘され、コピーもされてきたが、映像作品としてその秘密に迫ったのが『永遠のモータウン』だ。
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 往年のセッションマンが語る数々の逸話も面白く、彼ら(ファンク・ブラザーズ)によるライブでは、チャカ・カーンやジェラルド・レバート、ミッシェル・ンデゲオチェロ、ベン・ハーパー、モンテル・ジョーダンらがかつての大ヒット曲を歌う。
 反対にモータウンの主流をなす人々がまるで顔をみせないのは、このストーリーが、同社がいかに適切な労働条件を無視してセッションマンたちをこき使い、簡単にお払い箱にしてきたかが、描かれているからだ。
 映画の中で最大の経緯が払われている故ジェイムズ・ジェマーソンの名前を知っている人は、かなりのソウル・ファンのはずだが、ジェイムズやベニーの在りし日の写真を、舞台に飾るシーンなど、なかなかに熱いものがある。
 不思議なのは、ジェイムズのベースが、ポール・マッカートニーと並び、エレキ・ベースの最大の革新者である、という言い方がこの映画ではなされなかったこと。監督(ポール・ジャストマン)も、熱くなり過ぎて、思わず言い忘れたのかも知れない。
*2004年5月1日から、渋谷シネ・アミューズにてロードショー

( 2004/04/19 )

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