U2のボーカリスト、ボノは音楽活動とは別にアフリカの最貧国の債務帳消しを訴えるなど世界的な社会活動家としても知られている。2002年のいわゆる「
ダボス会議」における年次総会では、ビル・ゲイツと共に壇上にのぼり自論を訴えた。
この3月にはイギリス政府から名誉ナイトの爵位を与えられたが、その評価も「音楽での活躍」そして「貧困問題、エイズなどに苦しむアフリカへの並外れた活動」に対してであった(彼はアイルランド人なので、英国の貴族の称号は使えない)。
では、そんなボノとはいかなる人物であるか、『ボノ インタヴューズ 』は、その個性のヒダの部分にまで踏み込みなかなか面白い。
同書は、音楽ジャーナリストであるミーシュカ・アサイアスが各地を飛び回り何度もインタビューを重ねたもので、日本語では本文が約480ページもある(訳、五十嵐正)。ボノの生い立ちから、親族との付き合い、メンバーとの出会いほか、ボノ〜
U2の熱心なファンには重要な情報がたくさん登場する。
社会活動家としての発言もふんだんにあって、その活動の土台には信仰があることも彼は熱心に語っている。
「信念が恐怖を凌ぐ。自分の主題を知れ。対抗勢力を知れ。勝てない議論に挑むな。アフリカの問題において、僕らは負けるはずがない。だって、全能の神がすでに開けた扉に自分たちの肩を押し当てているんだから」
「僕らが二十三ヵ国の債務を帳消しにした後にさえ、毎年、自国の健康と教育に使うよりも多額な金を世界銀行とIMF(国際通貨基金)に返済している国がまだある。彼らは威厳ある人々で、自分の足で立ち上がりたいと思っている。でも彼らを大地に鎖でつないでいるのは僕らなんだ!」
(ジョージ・W・
ブッシュ米国大統領から多額の海外援助金を拠出を約束させたこと、そして、
ブッシュと並んでピース・サインを出しながら写真に写ったことに関して)「人間として、彼が心を動かされて、エイズの蔓延に何かをすると言ったとき、僕は彼を信じたよ。彼を信じた。いいかい、僕は政治的に、地理的に、これ以上異なるところはない場所からやってきた。そこに同席するには信条において実存的な決断をしなくてはならなかった。彼は僕をそこに迎える必要はまったくないんだ。でも、誰かと仲良くやっていくためには、すべてのことに一致しなくてもいい――たった一つのことだっていいんだ」
上記最後の引用は、
ブッシュとすら手を握ったと批判されたことについてのボノの返答である。
彼はこういった巨大なプロジェクトを動かすには、世界的なスターとしての一つの方法論、自分の使い方が、あるとも言う。
「名声はおかしなものだ。馬鹿げているよ。でも、ある種の通貨なんだ。賢く使わなくちゃね」
ボノはこういった自分の立場、通貨としての自分を利用して、「エルビス(・プレスリー)」探しを始める。つまり世界を動かしている組織、人間たちの「ボス」が誰であるかを見つけ、当人に直接交渉して行ったのだった。
揺るぎない信仰心を力として、地球規模の問題に「現実的」に行動するボノ。
ずいぶん長いインタビューだが、その方法論を知るに格好の書籍と言えるだろう。
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書籍『ボノ インタヴューズ 』(リットーミュージック)
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CD『How to Dismantle an Atomic Bomb / U2』