奄美ブームの火付け役、RIKKIの1st録音が再発
BVCR17020
 強烈なプロモーションによって、この夏の大ヒットとなった元ちとせのメジャー第1弾『ハイヌミカゼ』の波に乗り、奄美のシンガーが注目されている。
 RIKKI(中野律紀)は、元ちとせが憧れたシンガーで、90年代には最も今後が期待されていた。再発『むちゃ加那』(BMGファンハウス)では、彼女の瑞々しい歌声を聴くことができる(2002年8月21日発売)。
 以下は、彼女が18歳(1993年)の時に発表されたライナー「島唄(奄美民謡)と私」。

 私は、風光明媚と人々が称賛する、奄美大島の古仁屋に生まれ育って18年、物心がついた頃には、既に両親の口ずさむ、島唄の世界に浸っていました。 
 唄の意味も言葉も分からないのに、哀調に満ちたメロディーと、その雰囲気に、幼い魂がゆさぶられていたのでしょうか。楽しいにつけ、悲しいにつけ、島唄を唄うことで、いつしか新鮮な無の境地にいる自分に気づき、好んで島唄の奥深い心を求め、島唄と共に成長して参りました。ボランティアで、ホームで唄う時、家族の名前さえ忘れているという老人達が、涙を流して喜んで聞いているお姿を見た時、島唄はいいなあ、病める人の良薬にもなるんだ、と自分への大きな励みにもなりました。
 私が小学生の頃は、聞いている皆さんが喜び、ほめて下されば、それで満足していました。しかし、島唄の心とは郷土を愛する心であると信じ際限もなく奥深く、先祖達の生活に密着した叫びであり、手造りの文化である、と教えてくれた古老の言葉が、年を重ねると共に、分かるようになりました。
 私の好きな「むちゃ加那節」は、美しく心優しい娘であったばかりに、村娘達にねたまれ、だまされて海に突き落とされ、哀れ海の藻屑と消えたという、悲しい伝説の唄です。
 この唄は音域が広く、裏声を含む難しい唄なので、大会に出場するまで4年間、どうしても「むちゃ加那」の無念さが唄えず、母と共に伝説の地、鬼界島に渡り、苔むす墓標にひざまずき、日暮れまで両手を合わせていました。そのうち何となく自信めいたものが沸いて来たことに感謝しています。 
 全国大会は、その墓標の写真を胸に武道館のステージに立ちました。何となく「頑張れ!!」と叫んでいるようにも聞えました。
 世の中がどんなに進歩しようと、島唄にこめられた優雅で、素朴な唄の本質に変わりはないと思います。平和で豊かな生活の中で、生まれ育った私達だからこそ、人間味あふれる島の文化を、尊い遺産として、受け継ぎ唄い継ぐべき務めがある、と肝に銘じ努力して行きたいと思います。

( 2002/08/07 )

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中野律紀
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