河村要助個展「good news」:5月20日から6月15日まで
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 長く病気療養中だった河村要助による久しぶりの個展が銀座で開かれる。
 河村要助は1970年代以降、いわゆる「イラストレーションの時代」にあって筆頭の一人として大活躍した人物。ポップ・ミュージックに関する造詣の深さも多くの人が認めるところであり、今回の「good news」は、日本における「ポップ」とは何かを知る上でも貴重な個展となるだろう。
 佐藤晃一、佐藤卓という日本デザイン界の大物二人が同展の担当という豪華さ。かつ、ヨースケの雑誌とも言われた音楽雑誌「Bad News」も展示される。
 
 
 
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「イラストレーター 河村要助:Good News」
2009年5月20日(水)から6月15日(月)まで。入場無料
最終日午後5時閉場 
会場:松屋銀座7階・デザインギャラリー1953
(松屋銀座=毎日朝10時から夜8時まで)
主催:日本デザインコミッティー
問合せ:松屋銀座 tel.03-3567-1211
 
 
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ヨースケ・ポップ・ミュージック・イラストレーション
 
 河村要助とニューヨークのスパニッシュ・ハーレムを歩いたことがあった。
 ハーレムが、今のようにクリーンな街へと変わる、以前のことである。
 十字路に一枚の広告紙が落ちていた。広告紙は、雨に濡れ、たくさんの人たちに踏みつけられて、アスファルトにくしゃくしゃになって張り付いていた。
 そのゴミを、ふとみとめた彼は、立ち止まり「これ、きれいだね」と言った。
「ぼくのイラストも、あんなになっても活きて、きれいだったらいい」とも。
 かつて、イラストレーションとポップ・ミュージックとが、切っても切れぬ関係の時代があった。河村要助はその時代に世界へ飛び出た男である。ヨースケ。1970年代のポップ・カルチャーを代表する一人として登場したこの男の一日といえば、朝からソウルやロックを腹におさめ、飲み、夜になれば抱いて寝る。欠かすことのない、365日。表現はおのずと音楽から逃れることはできず、彼のイラストは、音楽の先にある、海の向こうの「見知らぬ人たち」への憧憬と共感をも表わすことに際立った特質を持っていた。LP…そう、あの黒くて丸くて、針を落とすと音が出るビニール…が、ぼくらの愛人であった時代だ。
 それは、紙に、インクで字や画像が印刷された定期刊行物、すなわち「雑誌」が、テレビと若者とロック&ソウル&フォークと結託し悪ダクミをして、日本の文化を牽引した時代である。また(小さいながらも)産業としての音楽ビジネスが確立し、勢いづいたのもこの時代からであり、イラストレーションも同じ日本における各産業の「心意気」と「フトコロぐあい」を象徴するものとして、メディアに乗り、たくさんの憧憬と発見をぼくらに与えてくれたのだった。
 若き日の河村要助はそこにいた。ビジネス・システムと共にある表現…それはポップ・ミュージックもイラストレーションも同じだとぼくは思うが、ヨースケはまさにその両方の肌合いを体現し、アナログという言葉も流通しないアナログの時代に現われた。 
 80年代、河村要助は旅をする。東京生まれの、都会しか知らない表現者が訪ねた心のフルサトも、海の向こうの、大都市だった。それはニューヨークの、黒人と有色人のon the street corner。ジャズがありソウルがあり、そして「キューバを父に、プエルトリコを母に、雪降るニューヨークで生まれた移民の音楽」、すなわちサルサが鳴り響くスラム街だった。どんなに愛しても、その音楽と「死ぬときは別」とは河村要助らしいレトリックだが、現代絵画の一形式であるイラストレーションは、常にアンビバレンツな社会性を内包しながらそこにある。もちろん優れた音楽表現も同じであって、89年6月からスタートした雑誌『Bad News』は、このご両人を改めて「結婚させる」べく爆走した、彼にとっては記念碑となる「作品群」であったといえるだろう(雑誌名も彼の命名であり、かつ資本提供者の中心的一人でもあった)。今から振り返れば、アナログ時代最後の、呆れるほどにアナログな雑誌! 
 そして今。ぼくらのヨースケは、どこに立っている?
藤田正(音楽プロデュサー)
 
*「イラストレーター河村要助 Good News」@松屋銀座・デザインギャラリー1953用原稿(for Japan Design Committee 09-05-18提出)

( 2009/04/29 )

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